役職や関係性に関わらず誰もが敬意とリスペクトを持つ企業風土へ。

アンガーマネジメントでコミュニケーションの質を向上。

セイコーグループについて

1881年の創業以来、伝統と革新をベースに世界をリードしてきたセイコーグループ。

変化の激しい時代においても「社会に信頼される会社であること」という企業理念のもと、培ってきた技術をベースに様々な社会課題に対応するべく、多角的に事業を展開しています。

同グループは、人材開発や多様性の向上、組織風土づくりに積極的に取り組み、社員の働きがいを高め、イノベーションの創出を通じて、グループ一丸でさらなる成長を目指しています。

今回は、セイコーグループ様の組織風土改革を支えるコミュニケーション活性化の取り組みについて、セイコーグループ株式会社 専門役員 次世代リーダー開発室長 兼 グループHR戦略部長の浅見様、セイコーソリューションズ株式会社 経営企画統括部 統括部長の末次様にお話を伺いました。

 

「社会に信頼される会社であること」という企業理念のもと、本質的な多様性を追求。

貴社の企業理念にもある、「社会に信頼される会社であること」のために、社内のコミュニケーションや組織文化において、特に大切にされていることは何でしょうか。

SEIKOというと時計をイメージされる方も多いかと思いますが、実は、時計以外にも電子デバイスやシステムソリューションなど多様な事業を行う企業が集まってグループが形成されています。

特に近年はシステム事業を中心に様々なバックグラウンドを持つ企業がグループにジョインしていることもあり、グループ横断でのシナジーを最大化するために、人や組織間の接点を増やし、コミュニケーションの活性化や人的交流を促す施策や環境づくりに注力しています。

創業145周年を迎えた今、さらに150年、160年と続いていく未来を見据えたとき、グループがより環境変化に強くなり、サステナビリティを向上させていくためには、会社間の垣根を越えた交流とコミュニケーションの活性化が持続的な成長の基盤になると考えています。

同時に、より強い組織づくりのために、多様性の推進にも向き合っています。
役員クラスや上級管理職におけるジェンダーバランスなどの表層的な多様性の課題は確かにありますが、私たちが重視しているのは、経験やバックグラウンドを背景とした価値観や意見の多様性という本質的な課題です。
異なる意見や多様な価値観を互いに認め合い、受容できるコミュニケーション基盤こそが、企業のサステナビリティを高める強い組織のあり方だと考えています。

 

「距離が近い」からこそ必要な、丁寧でリスペクトのある関わり方

貴社はプロパー社員も多く、離職率も低いこともあり、長く一緒に働く社員様が多いと伺いました。「お互いの関係性に関わらず、敬意とリスペクトのある関わり方を意識しよう」と考えられた背景についてお聞かせください。

当社グループには、新しいバックグラウンドを持つ仲間が増えていく一方で、役員や幹部層を始めとして社歴が40年におよぶベテラン層も多く在籍しています。
この高い同質性は、結束力が強く高い実行力を発揮する反面、甘えや馴れ合いも生じやすく、新たな挑戦や異なる考え方に対してネガティブになる側面もあります。

コミュニケーション面でも、当事者同士にとっては勝手知ったる仲としての「いつもの表現」であっても、新しく入ってきたキャリア採用社員や若手社員の目には、時に乱暴で威圧的に映ってしまい、心配する声が聞かれることもありました。

当社のグループ人材戦略の基盤活動として「人権の尊重」を掲げていますが、どんな関係性であっても相手に対する敬意と人権を尊重することが、当社グループ社員全員に求められる最も重要な行動であると考えます。自らの無意識下における言動を振り返り、行動から変えていくアプローチが必要であると考え、今回の取り組みを行うこととしました。

 

役職者層のコミュニケーション改革とアンガーマネジメントへの注目

特に役職者層の皆様が、ご自身のコミュニケーションをより良くアップデートする契機として、なぜ「アンガーマネジメント」に注目し、弊社を選んでくださったのでしょうか。

以前からアンガーマネジメントの考え方や講師である戸田先生の知見に注目をしていました。

役職や担当職務に関わらず、相手を一人の人間として、同じグループの仲間として敬意を払い、異なる意見であっても尊重する姿勢は、日ごろの言動に表れますし、まさに組織内でパワーを持つ役員層こそが、確実に実践していく必要があると考えています。
その第一歩として、自らの行動から気づきを得て、自発的な変容を促すアプローチをとっているアンガーマネジメント研修の実施は有効であると判断し、年に2回、グループの役員が一堂に会する会合にて実施しました。

私も研修をオブザーブしました。研修において「怒りの感情」を否定するのではなく、「怒りの感情をどのようにコントロールするか」が大切であると定義されていました。
「分かっているつもり」になりがちなこのテーマを、専門的な第三者から客観的に示される機会は非常に新鮮でした。
これこそが、まさにセイコーソリューションズが抱えているコミュニケーション課題と深く親和していると確信し、すぐに社内に持ち帰り、同社でもマネジメント向けの研修テーマとして導入を決定しました。

 

自省から生まれた前向きな変化

実際に研修を終えて、受講者の皆様の反応はいかがでしたか?現場での具体的な「言葉の変化・行動の変化」などがあればぜひお聞かせください。

研修実施後、参加者からは「無意識のうちに周囲に対して威圧的とみられる言動をしていたかもしれない。気をつけたい。」といった自省を含む非常に前向きな評価を得ることができました。

また、「周囲の若手社員たちからどう見えているか」という客観的な視点を理解できたという意見も挙がっています。

講師をお願いした後で知ったことでしたが、戸田先生と当社グループに深いご縁があったということも、受講者のセミナーに対する「耳の傾け方」に大きくプラスの影響を与えてくれました。この心理的な親近感も学習効果を高める上で、非常によく作用したと感じています。

役員クラスでの気づきがトリガーとなり、「部長クラスなど、より実務に近い管理職層にもこの研修を展開したい」という要望が上がるなど、良い波及効果が生まれています。

 

日本アンガーマネジメント協会の評価と今後の展望

研修内容やサポート体制について、ご評価いただいている点がございましたら教えてください。

セイコーソリューションズで実施した研修においても、戸田先生のお力もあり、受講者にしっかり響くセミナーだったと感じています。
コミュニケーションにおけるテクニカルな部分も分かりやすい解説により、受講者が自分事として捉えやすいカリキュラムの設計となっていました。

今後の展望としては、日常のコミュニケーションの中に「アサーション」や「アンガーマネジメント」を共通言語としてしっかりと定着させ、長期的なカルチャー醸成に落とし込んでいく予定です。

その実現にあたって、専門的な知見に基づいた第三者的な視点から組織を診断し、「さらにここを改善すべき」という客観的なアドバイスをいただける存在は不可欠であると感じています。

日本アンガーマネジメント協会様や株式会社レビックグローバル様には、引き続き実践的なご支援をお願いしたいと考えています。

全日空モーターサービス株式会社について

航空機地上支援器材の保守管理、整備、開発・設計から製造、販売までを一貫して行う総合技術サービスを提供する全日空モーターサービス株式会社。

1969年の創業以来、徹底した「お客様第一主義」のもと「創造力と技術力」を活かし、お客様の多様化・高度化するニーズに対応し、高い品質やサービスを提供し続けています。
同社は、ANAグループの方針である「デジタルと人間の力の融合」を基盤に、「航空業界No.1のモビリティサービス企業」を目指し、社会貢献と組織成長の同時実現を推進しています。

今回は、その成長戦略の核となる「人への投資」に着目。感情に任せない必要な指導を実施し、ハラスメント懸念による指導者の萎縮を防ぐことで、誰もが安心して発言できる心理的安全性の高い組織を築くための取り組みについて、企画総務部 染谷様、武市様、原様、松原様にお話を伺いました。

「人」への投資を最優先に、予防整備の強化と環境技術で挑む持続可能な組織づくり

ANAグループでは「チームスピリット」を行動指針に掲げ、価値創造の源泉である「人の力」と「チームワーク」の発揮を重点項目に据えておられます。社会的価値と経済的価値の同時創造を実現するために貴社で注力されている具体的な施策をお聞かせください。

ANAグループの方針である「デジタルと人間の力の融合」を基盤に、弊社では「航空業界No.1のモビリティサービス企業」を目指し、社会貢献と会社自身の成長の同時実現を図っています。
具体的な施策としては、飛行機を支える特殊車両や、お客様が航空機に搭乗される搭乗橋(PBB)などの空港器材設備において「予防整備」を強化しています。
過去のデータ分析と熟練の技術を組み合わせて故障を未然に防ぐことで、お客様の安全で快適な移動を支えています。

また、老朽化した車両を電気自動車に改造するコンバージョン技術を用いて、環境問題の解決にも取り組んでいます。
さらに、社内の対話とデジタルツールを掛け合わせて業務の無駄を省き、そこで生み出した時間と高い技術力を活かして、グループ外の企業や海外案件へもサービスを広げ、会社の収益向上に繋げています。

これらの基盤として「人」への投資を重視しており、安心して意見を言える風通しの良い職場を作り、最新技術を扱う技術者を育成することで、会社と社員が共に成長し続ける組織風土を築いています。

自社研修との高い親和性と、課題に寄り添う柔軟なプログラム設計が決め手

数ある研修の中から、なぜ「日本アンガーマネジメント協会」のアンガーマネジメント研修をご選定いただいたのでしょうか。
比較検討される中で、決め手となったポイントをお聞かせください。

日本アンガーマネジメント協会様を選んだ一番の理由は、弊社がすでに行っているリーダー向けの研修やコミュニケーション研修などの内容と考え方がとてもよく合っていたからです。

また、私たちの抱える悩みや対象となる社員に合わせて、「基礎知識」「上手な叱り方」「ハラスメント防止」といった実践的な内容を柔軟に組み合わせていただける点も大きな魅力でした。
さらに、受講者自身が自分の怒りの傾向やクセを客観的に知ることができる「アンガーマネジメント診断」があり、一時的に知識を得るだけでなく、怒りに振り回されないよう長期的に自分を変えていくきっかけを作れる点も決め手となりました。

管理職の方々を対象に、アンガーマネジメント研修を導入された背景について教えてください。
また、基礎知識からハラスメント防止施策まで網羅したプログラムにされた理由についてもお聞かせください。

社内のアンケート調査から、「上司や先輩によって教え方が違い、部下や後輩が戸惑っている」といった教え方のばらつきや、グループ内での風通しといった課題が見えてきました。

また、社員からも「指導とハラスメントの違いを明確にしてほしい」という声が上がっていました。
そのため、単にハラスメントを禁止するだけでなく、まずは管理職を対象に、怒りの仕組みを知って感情を抑える「基礎知識」から、相手にきちんと伝わる「上手な叱り方」、そして「ハラスメント防止」までをしっかりと学び、根本的な指導力を高めてもらう必要がありました。

ハラスメント評価が改善、安心感が生む良好なコミュニケーションを促進

管理職の方々にとどまらず、若手社員・中堅社員の方々に対象を広げられた背景や狙いについてお聞かせください。
また、実施回数や研修体制など工夫された点がございましたら、ご教示ください。

管理職だけでなく、若手や中堅社員にも対象を広げたのは、アンケートで「ハラスメントを気にして、教えることや発言することに萎縮してしまう」「何でもハラスメントだと言われることで、自由な発言ができなくなっている」といった悩みが見られたからです。

誰もが正しい知識を持つことで、会社全体のコミュニケーションを良くしたいと考えました。
工夫した点としては、現場の仕事への影響を少なくするため、時期をずらして2回開催しました。

また、当日参加できない社員のために講義を録画し、後から1ヶ月間いつでも動画で学べるようにすることで、全員が確実に受けられるようにしました。

研修実施後、受講者の皆様からはどのような反響がありましたか?

研修の後は、弊社が目指す「誰もが安心して意見を言える職場づくり」に繋がる前向きな声が届いています。
「相手の受け取り方次第でハラスメントになり得るため、自分自身の振る舞いを見直そうと思った」など、自分を振り返る声が印象的でした。

また、「安全に関わる注意はその場で伝える文化を続けたい」という意見もあり、必要な指導と感情的な怒りを社員が区別し始めていることが分かります。
社内の意識調査でもハラスメントに関する評価が改善しており、研修による言葉選びや態度の変化が、会社全体のコミュニケーションを良くする結果として確実に表れています。

日本アンガーマネジメント協会の評価と今後の展望

企画から実施までを振り返って、講師の登壇内容や事務局のサポート体制についてのご感想をお聞かせください。

研修の企画から実施まで、たくさんの手厚いサポートをいただき心より感謝申し上げます。
特に事務局の皆様には、決まった内容を提供するだけでなく、事前のアンケート結果や現場のリアルな状況を丁寧に聞いていただきました。
その上で、弊社特有の悩みに合わせて柔軟に研修内容を工夫していただいた点が非常に良かったです。

また、経験豊富な講師による説得力のある実践的な講義は、受講者の理解を大いに深めてくれました。
さらに、不参加となってしまった社員が後から動画で学べるように手配していただくなど、きめ細やかで柔軟なサポートのおかげで、全社を挙げた取り組みとしてスムーズに進めることができました。

今回の取り組みを踏まえ、貴社では今後さらにどのような組織づくりを目指していかれますか?
また、その過程において、日本アンガーマネジメント協会および株式会社レビックグローバルに期待されることがあれば教えてください。

今回の取り組みで得た成果をもとに、今後は怒りやその時の機嫌に振り回されることなく、仲間同士で前向きな意見交換ができる、誰もが安心して発言できる職場づくりをさらに進めていきます。

社員一人ひとりが自分の能力や人間性を最大限に発揮し、協力し合いながら、会社と共に自ら成長できる組織の定着を目指します。

その過程において、日本アンガーマネジメント協会様および株式会社レビックグローバル様には、これからも弊社の変化する課題に寄り添い、社員の意識を変えてコミュニケーションを強めるための、実践的な研修や専門的なアドバイスを引き続き期待しております。

諏訪市について:自然・歴史・ものづくりが息づく高原湖畔都市

長野県の諏訪市は、「透明度日本一の高原湖畔都市」を掲げ、職員の健康と健全な組織運営を重視した健康経営に取り組んでいます。

2026年度「アンガーマネジメント経営賞」を受賞した諏訪市役所では、2019年からアンガーマネジメント研修を継続し、管理職や保育園長など幅広い職員が受講してきました。

「まちの空気は、住んでいる人たちの心持ちによってつくられると思います」「職員の心持ちは、市の事業成果に直結すると思っています」

そう語るのは、金子ゆかり諏訪市長です。諏訪市健康経営宣言や職員サポート室の設置など、多様な職員が安心して力を発揮できる環境づくりと、その実践の一つとして続けてきたアンガーマネジメントについてお話を聞きました。

アンガーマネジメント経営賞受賞、おめでとうございます。あらためて諏訪市の魅力を教えていただけますか。

諏訪市は、諏訪湖を中心に、霧ヶ峰高原や上諏訪温泉、諏訪大社、高島城など、爽やかな空気と歴史があり、私たちは「高原湖畔都市」と掲げています。

また産業においても、冷涼な空気や人々の器用さをもとに、戦後は精密機械産業の発展から「東洋のスイス」とも呼ばれてきました。今は超微細加工の技術を生かして、航空宇宙や環境、医療の分野にも展開しています。

観光では、最近はアニメーションや映画の世界でもロケ地や舞台として注目を集めています。市民のみなさんとともに「磨けば輝く高原湖畔都市」を目指しています。

 

「透明度日本一」に込めた、心の壁のない組織づくり

2025年に、市長が自ら健康経営宣言されており、職員の健康や働きやすい環境づくりを進められています。

職員の心持ちは、市の事業成果に直結すると思っています。

職員には窓口にいらっしゃる市民のみなさんや様々な団体と接する機会があり、地域全体の空気にも影響します。ですから、まず働く職員が心も身体も健康であること、自分の力を思い切り発揮できる職場環境であることは大事だと思います。

私がお伝えしてきた「透明度日本一」という言葉には、水や空気の綺麗さだけでなく、人と人との心の壁のなさ、コミュニケーションにおいての透明度という意味も含まれています。

また、「大きな耳と分かり合う自由な対話」という言葉も大切にしています。人の言うことをよく聞きましょう。自分の話をするだけではなく、分かり合うために対話しましょう、という思いも込めました。

そうした考え方をもとに、2022年(令和4年)には職員サポート室を設置し、身体だけでなく心の健康についても相談できる体制を整えてきたなかで、2025年(令和7年)に健康経営宣言を行いました。

近年はコロナ禍、少子高齢社会、働き手の不足、育児との両立などの課題があるなかで、できるだけストレスなく仕事に向き合える環境づくりに取り組んできました。医療費削減の視点からも、健康経営は職員だけでなく行政全体を支える大切な取り組みだと考えています。

[caption id="attachment_98146" align="aligncenter" width="600"] (左から)アンガーマネジメント協会代表理事の松島徹、諏訪市長の金子ゆかり氏、諏訪市総務部職員サポート室 室長の久保田浩子氏。[/caption]

 

アンガーマネジメントを実践的なスキルとして導入

アンガーマネジメント研修を7年に渡り継続されていますが、当初はどのような課題意識から導入されたのでしょうか。

もともと市役所では、風通しの良い働きやすい職場づくりの取り組みとして、ハラスメント防止研修を実施していました。

その中でアンガーマネジメントを知り、働きやすい環境の改善のためには、職員が実践的なスキルとして身につけることが大切ではないかと考えて、2019年(令和元年)からアンガーマネジメント研修を取り入れたのがスタートです。

どのような研修を導入されていますか。

基礎編、実践編、アサーション編の3つを実施しています。

職員は、管理職や保育園の園長なども研修を受けていますし、近年は、私も副市長や教育長とともに理事者として受講しました。

これまでに、延べ386人が受講しています。諏訪市の正規職員は約480人で、会計年度任用職員を含めると約900人規模になります。アンガーマネジメント研修は正規職員を中心に実施しており、多くの職員が受講しています。

研修を継続して、組織に生まれた変化

受講者からはどのような声がありましたか?

受講した職員からは、「アンガーマネジメントについて、正しい理解が深まった」「業務上だけでなく、人との関わりにはアンガーマネジメントが大切だと感じた」、「信頼関係の構築のためにコミュニケーションの質の向上を目指していきたい」といった感想が寄せられています。

7年間継続されてきて、組織にはどのような変化がありましたか?

2025年に、職員を対象にしたストレスチェックの結果では、全項目のなかで「イライラしやすい」が低い結果となりました。他団体との比較もありますが、良好な結果が出ています。職員同士の人間関係も穏やかになってきた印象があります。

最近では、審議会なども含めた女性登用率が目標の40%を達成しました。部署ごとの取り組みだけでは実現できない目標でしたが、全庁が協力しながら工夫を重ねてきました。

達成できたのは、職員のみなさんの協力関係があったから。このように、あらゆるところに良い効果が生まれてきているのではないかと感じます。

健康経営と働き方改革を両輪に、誰もが働きやすい職場へ

今後はどのような職場環境づくりを進めていくのでしょうか。

健康経営宣言には5つの活動方針があり、メンタルヘルス対策や相談体制の充実により、心理的安全性の確保をすること。コミュニケーションの活性化を促進し、互いの人権を尊重し合う職場環境を醸成することなどです。

この方針に沿って、具体的に進めている取り組みが、ストレスチェックの受検率の向上、相談体制の充実、そして各種研修の実施です。

アンガーマネジメント研修やハラスメント研修、コミュニケーション研修、メンタルヘルス研修などを職員に提供しています。つながりを意識した階層別研修もありますし、新規採用職員にはメンターのような育成員を配置する仕組みも取り入れています。

また、働き方改革にも取り組んでいます。

2022年(令和4年)から2025年(令和7年)の3年間で、全職員の平均有給取得日数が3日増えました。ただ有給を取得すればいいわけではなく、休みやすい環境が必要です。「職場ではチームで仕事をしましょう」「一人で抱え込まないでください」というメッセージを発信してきました。自分の仕事を理解してくれている同僚がいることで、互いに支え合うことができます。

こうした改革や取り組みが、職員の心のゆとりやストレス低減に役立っていると思います。

 

一人ひとりの心持ちが、まちの空気をつくる

最後に、今後の展望について、アンガーマネジメントの視点も含めてお聞かせください。

今年の4月1日に、人材育成基本方針を改訂しました。

改訂前に、職員にアンケートを実施したんですが、「職場で能力を発揮し、公務員として成長するために重要と考えることは何ですか?」という問いに対して、「協力し合える職場」と答えた職員が群を抜いて多かったんですね。

この声を受けて、目指すべき職場の姿の柱をここに置き、目指すべき職員像についても「誠実」「協調」「柔軟」というキーワードをまとめました。「協力し合える職場」が挙がるのは、やはり良い人間関係の中で仕事をしようという意識が育まれていることの現れだと思います。

アンガーマネジメントも、その一つの取り組みです。上から目線の押し付けではなくて、「分かり合う自由な対話」が職員それぞれのセクションの間にある。そのような協力関係ができて、成果が上がってきていると捉えられると思います。

包括的に健康管理や人材育成を捉えて、働きやすい職場を作ることが、職員それぞれのスキルの十分な発揮、職員の心持ちにもつながっていきます。

まちの空気は、住んでいる人たちの心持ち、市民性によってつくられると思います。

かつて、高度経済成長期に汚れた諏訪湖をきれいにしようと有志の市民のみなさんが環境美化に取り組んできたように、その思いや活動があらゆることに広がっていくといいですね。

一人ひとりの心持ちが、大きな世の中を動かしていく。アンガーマネジメント協会のみなさんの思いやミッションにも通じるものだと思います。私たちもそこに共鳴しています。

日鉄物産株式会社について:合併を経て、多様な人材が活躍する商社

多様性に富む社員が在籍し、商社としての複雑な仕事を進める上で、円滑かつ効果的なコミュニケーション、職場環境の改善、ハラスメントの防止は重要な取り組みです。

2025年度「アンガーマネジメント経営賞」を受賞した日鉄物産は、どのようにアンガーマネジメント研修を管理職やグループ会社役員にまで拡大していったのでしょうか。

「ハラスメント防止」や組織の「心理的安全性」の観点から、その取り組みについて岩田敏昭(いわたとしあき)常務執行役員(写真左)と岩村幸代(いわむらさちよ)人事企画部人財開発課長に話を伺いました。

この度は、アンガーマネジメント経営賞の受賞、おめでとうございます。多岐にわたる事業を展開されていますが、まず御社について教えていただけますか?

岩田:日鉄物産は日本製鉄が80%を出資する商社です。当社は「鉄鋼」「産機・インフラ」「食糧」の3つの事業本部があり、加えて関係会社で「繊維」事業を展開しています。グループ全体では4つの事業があり、2024年度の実績は、連結売上高約2兆1800億円、連結経常利益536億円という規模です。

当社の特徴は、多くのM&Aや合併が続いてきたことです。さまざまな企業で経歴を積んだ社員が在籍しているため、多様性が当社の社風や人事、組織の大きな特徴のひとつとなっています。

商社といえば、単に物を仕入れて売るトレーディングを想像されるかもしれませんが、それだけではお客様や仕入先様のご期待には応えられないのが現在の商社です。トレーディングだけでなく、例えば加工機能の付与、在庫を管理し納期調整を行う、繊維や食糧事業では提案から受注、製造まで担うといった付加価値創出が当社の強みです。こうした仕事は個人の力だけでなく、組織的な検討・協力が必要です。一方、多様な社員が一つの複雑な仕事を進めるには、円滑なコミュニケーションや、職場環境の改善、ハラスメントの防止が重要だと位置づけ、長年取り組んできました。

 

 

ハラスメント防止」と組織の「心理的安全性」 アンガーマネジメントの導入

御社はバックグラウンドの異なる多様な社員がいるとのことですが、どのような課題意識でアンガーマネジメント研修を導入されたのでしょうか。

岩村:当社は「魅力のある会社」「エンゲージメントの高い会社」を目指していて「ハラスメント防止」や「心理的安全性」の取り組みが非常に大きな意味を持つと考えています。2023年には中村真一社長が「ハラスメント撲滅宣言」をし、同年、ハラスメント防止キャンペーンの一環として、ポスターを国内外の関係会社にも配布しました。

その年の課長層向け研修を検討していたところ、「部下の育成」「信頼関係の強化」のため、冷静な判断力を育みマネジメント力向上を目指せる、加えて組織の心理的安全性や風土改善にも役立つと考え、アンガーマネジメント研修を導入しました。最初は課長が選択できる研修プログラムの一つとしてアンガーマネジメント研修を実施し、受講者からは大変好評をいただきました。

 

 

実際に受講された方からは、どんな声や感想がありましたか?

岩村:「アンガーマネジメントの理論や手法が実務に役立つ」「怒りのコントロールやアンガーログも効果的」などの声がありました。

特に「自分の“べき”と相手の“べき”が違うことを冷静に考え直すことが役立つ」という感想が多く、私も共感しました。

最初は選択制だったとのことですが、翌2024年には部長層や社長を含む役員、グループ会社役員に受講対象を拡大されたそうですね。

岩村: 課長層の研修時に、「ぜひ上司も受けてほしい」「全社員にも知ってもらった方がいい」と多くの意見が寄せられました。人事部門としてこの考え方を全体に広めることが良い職場環境づくりにつながると判断し、部長層、役員層、グループ会社にも展開しました。

マネジメント層の実践に期待 若手社員にも伝えたいハラスメント

課長層を入り口として、部長、役員、グループ会社にも研修を拡大しましたが、組織風土や社員の意識にどのような変化を感じますか?

岩村:以前は命令型の指導が多かった記憶がありますが、最近は部下の気持ちに配慮した指導を心掛ける管理職が増えたように思います。

岩田:当社は、国内外の関係会社出向者を含め約1600人、連結グループ全体で約6500人の社員がいます。課長層から部長・役員・子会社役員にアンガーマネジメント研修を広げていますが、組織の変化をすぐには把握しきれていません。

ただし役員・部長・課長の立場にある人が体系的に学び実践することは非常に大きな影響があると考えます。アンケートでも「研修内容を今後実践します」というコメントが多く、今後の効果に期待をしています。

また、社員アンケートやストレスチェック等で一連の活動や研修の効果をモニタリングし、組織改善につなげたいと考えています。さらに、管理職だけではなく若手社員や営業を補助する職種の方にもぜひ受講してほしいという声が多くありました。ハラスメントは“上から下”だけでなく、“下から上”へのケースもあり得ると気づかされました。今後も研修対象を広げ、組織強化の原動力にしたいと考えています。

 

 

ハラスメント防止と人材育成、全社員の学びと「職場内対話」

「社員一人ひとりが『人財』として信頼される存在を目指す」とのことですが、今後の取り組みについて教えてください。

岩村:毎年、グループ会社も含め全社員が「ハラスメント防止」のeラーニングを受講しています。昨年度は「業務上やむを得ず注意することはハラスメントにはあたりません」といった内容や、下からのハラスメント行為防止についても取り上げました。また「職場内対話」と称して、年に1回、全社員を5~6名のグループに分け、ハラスメントをテーマに話し合う場を設けています。「“くん付け”“ちゃん付け”はよいか」というようなことから対話して相互理解を深めることが大切だと考え、取り組んでいます。

2023年度の「職場内対話」では、世代間でハラスメント基準にギャップがあると分かり、2024年度は「世代の特徴を理解したコミュニケーション」をテーマに話し合いました。

岩田:2024年度はグループ会社にも広げて実施しました。初めての試みですが、今後も改善を重ねつつ続けたいと考えています。

アンガーマネジメントの視点から、組織のあり方についてお考えがあれば教えてください。

岩田:職場環境の方針は経営指針や行動理念としてまとめていますが、やはり個人ごとに考え方は異なると思います。

アンガーマネジメントやハラスメント防止の根底には、共に働く社員や関係会社の皆さんが大切なパートナーであるという認識があります。「上司・部下」「偉い・偉くない」は関係なく、お互いをリスペクトし接することが重要だと思います。

まずは自分を守るための意識として始まるかもしれませんが、本質は「周囲をリスペクトし大切にすること」。この考え方を持ってほしいと、研修や懇親会でも伝えています。こうした環境が整えば、より良い企業グループになれると考えています。

 


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諏訪赤十字病院について

「一番の変化は、挨拶がすごく増えたこと」

2025年度の「アンガーマネジメント経営賞」大賞を受賞した諏訪赤十字病院(長野県諏訪市)の久島英雄(くしまひでお)病院長(写真左)はそう語ります。

医療現場におけるハラスメントは、チームの円滑なコミュニケーションを阻害し医療ミスのリスクにもなりうる大きな課題です。

同院は、日本赤十字社ハラスメント防止規程に基づき「ハラスメント対策委員会」を設置。院長による「ハラスメントゼロ宣言」をはじめ、「ハラスメント防止研修」の実施や「ハラスメント相談窓口」の設置など、先進的な取り組みによって着実に対策を進めてきました。

9年間に渡って、管理職層を中心に「アンガーマネジメント研修」も継続されています。アンガーマネジメントの導入は、同院にどのような変化をもたらしたのでしょうか。

医療現場における心理的安全性の重要性とともに、久島病院長と、原雅功(はらまさのり)事務副部長兼人事課長(写真右)にお話を聞きました。授賞式でのコメントと合わせてご紹介します。

 

「アンガーマネジメント経営賞」大賞受賞の久島病院長のコメント

 

本日、このような栄えある授賞式にお招きいただきまして、誠にありがとうございます。

私たち諏訪赤十字病院は、たしかに9年間(アンガーマネジメント研修を)やっています。大したことをやってるわけではないんですが、この9年間で3人、病院長が代わってるんです。ただ、病院長が引き継ぎ、細々とですけれども続けてきた。そういったことが、この度の受賞につながったのかと考えております。これからも職員の満足度の向上と、病院という組織の中でのハラスメントを根絶するために頑張っていきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

 

アンガーマネジメント研修後、飛躍的に増えた「医師からの挨拶」

この度は「アンガーマネジメント経営賞」大賞受賞、おめでとうございます。9年間に渡り、継続的にアンガーマネジメント研修を実施され、管理職層を中心に延べ701名が受講されています。組織にはどのような変化がありましたか?

久島院長(以降、久島):組織の中にいると、実感しにくい部分はありますが、一番の変化は、挨拶がすごく増えたことです。一時期、原は日本赤十字社本社に3年間勤務し、その後また当院に戻ってきたのですが、そのときに実感したことが、「挨拶がすごく増えた」と。

 

 

原事務副部長(以降、原):とくに医師からの挨拶が飛躍的に増えましたね。雰囲気が明らかに変わっていると感じました。さらに昨年よりも今年の方が、職員間の挨拶の頻度は高まっていると感じます。

日頃から、院長が「心理的安全性」の重要性について職員にメッセージを発信していますので、そういった心理面も後押ししているのだと思います。

 

アンガーマネジメント研修を導入されたきっかけについて教えてください。

久島:研修を始めたのは、今から9年前の2016年です。当時、ハラスメント対策委員会を立ち上げ、ハラスメントが発生した際に職員が相談できる窓口として「ハラスメント相談員」を配置し、事案に対応しました。この立ち上げと同時に、アンガーマネジメント研修を導入したんですね。

原:当時は、まず日本赤十字社として職員へハラスメント対応のルールを中心に周知徹底しましたが、それだけでは変わらなかった。そこで、ハラスメントを発生させない未然に防ぐ良い手法はないかと模索する中で、アンガーマネジメントを知りました。

その頃は、まだアンガーマネジメントは珍しく、信州で受講した人はあまりいませんでした。研修講師を調べていくうちに、市内のセイコーエプソン株式会社にアンガーマネジメントファシリテーターが在籍していることを知り、知人につないでもらったんです。それ以来、ずっと研修を継続してご指導いただいています。

 

 

「人間関係の悩み」が少ない医療機関。管理職は必須、9年間の研修継続によって生まれた変化

研修は、どのようにして浸透していきましたか?

久島:最初の年に、管理職はほぼ全員、120名ほど集めて研修を実施しました。

原:当時は、職員の間でも「6秒ルール、知ってる?」なんて会話が交わされるほど話題になりましたね。新しいカルチャーが入ったなと思いました。

久島:その後も、新しく職員になった人や管理職に昇進した人たちが研修を受けていく体制を整備して、9年間、継続的に続けてきました。

 

具体的な効果について、もう少し詳しく教えていただけますか?

久島:職場の満足度も年々上がってきています。また、職員を対象にしたストレスチェックの結果を見ると、当院は業務量が多く忙しい職場なんですが、「人間関係で悩んでいる」という項目の数値が非常に低く抑えられています。これは、ハラスメント対策委員会が中心となり長年、取り組んできたことが実を結んでいるんじゃないかと思います。

 

医療の現場、患者とのコミュニケーションにも生かされていると思いますか。

久島:職員が生き生きと元気に働いていると、おのずと患者さんにも優しくなれます。ギスギスしてると患者さんにも厳しくなる。そこはもう明らかだと思います。

 

アンガーマネージメントが他の病院にも波及、医療現場に必要な“心理的安全性”

あらためて、医療機関がアンガーマネジメントに取り組む意義はどこにあるのでしょうか?

久島:医療が、工業や民間企業と一番大きく違うところは、機械じゃなくて、すべて「人」がやるところです。当院は455床で、1170人の職員がいます。それだけの病院を回すのは、すべて人の力です。その人間同士のコミュニケーションや連携が最も重要になります。もしそれが崩れれば、必ず医療事故につながります。

いい医療をやるためにーー。そういった理由を重視して、私たちはアンガーマネジメントに取り組んでいます。我々にとってはコミュニケーションが一番の財産です。

 

 

“医療現場における心理的安全性”は本当に大事ですね。どうすれば、このような取り組みが、他の医療機関にも広がっていくと思いますか。

原:当初、当院でアンガーマネジメント研修を開いたところ、地域の医療関係者の間で話題になり、他の病院でも実施したケースはありました。ただ、当院のように継続的に実施しているところはなかなかないようです。

今回の受賞を通じて、赤十字や地域でも情報発信されると思いますので、これをきっかけに波及していくことは考えられるのかなと思います。

……

諏訪赤十字病院は、ハラスメント対策委員会を中心にハラスメント防止の継続的な取り組みを行い、「コンプライアンスに対する満足率」は49.8%(2017年度)から63.7%(2024年度)に上昇。「パワハラに関するDI値」も同期間に−14%から+17%へと大幅に改善(+31ポイント)しており、その効果は数値でも裏付けられています。

日本アンガーマネジメント協会には、「前の環境(諏訪赤十字病院)がよかったから、アンガーマネジメント研修を今の職場でもやりたい」という他機関医療者の声が寄せられるほどです。

医療機関における職員の心理的安全性を保つことが、いい医療につながる。大切なことを教えていただきました。私たちもアンガーマネジメントを通じて、医療現場に貢献していきたいと思います。

 


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