リーダー育成のキャリアパスのひとつとして、管理職を対象としたアンガーマネジメント研修を導入。日鉄ソリューションズサービスアンドテクノロジー株式会社の目指す人材戦略とは

日鉄ソリューションズサービスアンドテクノロジー株式会社について

日鉄ソリューションズサービスアンドテクノロジー株式会社(旧 NSSLCサービス)は、「情報技術のプロフェッショナルとして、真の価値の創造により、お客様との信頼関係を築き、ともに成長を続け、社会の発展に貢献する」という企業理念のもとに、階層別研修や自己啓発のための研修などを実施して社員の育成に積極的に取り組まれています。

組織力やチームワークの強化のため、2019年より管理職向けに「アンガーマネジメント研修」を導入しました。現在ではかつてアンガーマネジメント研修を受講した従業員に向けてフォローアップ研修も実施し、継続的にアンガーマネジメントへの理解を深めていただいております。

社員ひとりひとりと向き合いながら社内の活力向上に励み、顧客のビジネス成長に貢献していくという組織風土が生成されており、当協会ではその取り組みを讃え、今年2024年に開催された第2回「アンガーマネジメント経営賞」にてアンガーマネジメント経営賞をお贈りしました。

アンガーマネジメントを社内研修に導入したコーポレートサービス本部 人事企画部 人事企画グループ山田様、木原様にお話を伺いました。

 

社内のエンジニアを統率していくリーダー育成のキャリアパスのひとつに、アンガーマネジメント研修を導入

 貴社は「情報技術のプロフェッショナルとして、真の価値の創造により、お客様との信頼関係を築き、ともに成長を続け、社会の発展に貢献する」という指針を明確にしていらっしゃいます。そこに向けた人材戦略についてお聞かせください。

当社社員であるシステムエンジニアのひとりひとりがプロフェッショナリティをもって日々自身の仕事に取り組む中で、自分の技術を磨くだけではなく、お客様のために技術を駆使し、お客様に信頼していただくのに相応しい技術力が必要になります。そのため、お客様が情報システムをどのように活用されているかしっかり着目して、改善につなげる提案力と、それを個人だけでなく組織の力で成し遂げていくチーム力の向上が事業戦略上も強く求められています。

人材戦略としても若手育成の段階からスペシャリティを高めるための技術力を養い、中堅層になる頃にはお客様やパートナー企業の方々と連携して仕事を成し遂げていく力を育成していきたいと考えていきます。そこに必要なマネジメントスキルを育成していき、社内のエンジニアを統率していくようなリーダーに成長することが当社の目指す人材戦略のひとつの姿です。

その育成のためのキャリアパスとしてアンガーマネジメント研修を導入しています。

エンジニア同士が課題や日々の悩みについて学び教え合って成長していく場作りをしているというのが、私たち人事としてのミッションでもあると考えています。

 

貴社の風土として組織の力やチームワークを大切にされており、 その一環として、リーダーシップ育成の場として、アンガーマネジメントの研修を導入してくださったということですね。では、アンガーマネジメント研修導入以前の課題を教えてください。

当社の場合は顧客である各企業様が情報システムを滞りなく運用継続できるための支援をしています。そこでお客様のことを真剣に思うが故に、社員同士の価値観の衝突のようなものがありました。

 

研修内容が、心に響く前に頭に響かないと浸透しない

課題を抱える中、アンガーマネジメント研修の導入に至った経緯を教えてください。また、アンガーマネジメント以外にもコミュニケーションやチームビルディングに関する様々な研修がある中、導入に至った理由はありましたか。

研修導入前から私自身がアンガーマネジメントに触れる機会があったことに加え、業務上の注意指導時の接し方について悩みを持つ社員が多かったため、アンガーマネジメントの理念の浸透が有効ではないかと感じたからです。

世の中に様々な研修が存在する中で、アンガーマネジメント研修は6秒ルールの活用方法等、しっかり理論として学ぶことができます。

当社はエンジニアの集団ということもあり、心に響く前に頭に響かないと、理論的な説得力がないと浸透しません。研修で学ぶメソッドやその背景も含めて研修内で説明されており、ベースが確立された上でスキルを実践していくので、安定感や安心感があります。

 

アンガーマネジメント研修に対する受講者様や、人事ご担当者様の感想をお聞かせください。

受講した社員からフィードバックされるコメントの内容が、徐々に変わってきていると感じます。
最初は新鮮に捉えてもらって、例えば「怒ることは悪いことではないんだ」とか「自分の感情をいったん素直に受け止めていいんだ」ということに対して安心したような声が多かったです。

それが最近はダイバーシティや価値観の違いへ目を向ける声も多くなっています。

例えば管理職の年代にとって、若い年齢層の社員が入ってきて今まで考えもしなかったような価値観や人間性に触れ、自分が否定されてしまったような気持ちになったり脅威を感じてしまったり…
そういう場面で怒りの感情を感じてしまったときでも、アンガーマネジメントを学んでおくと、自分と相手の価値観の違いを認識した上で怒りと上手に付き合うことができるという受け止め方に変化してきているように感じます。

アンガーマネジメント研修を継続している中で、自分の怒りの感情を露わにするような場面はなくなりましたので、自分の中で抑えているものにどう向き合っていくかという方向に変わってきているのかもしれません。

受講した社員から提出されたアンケートでは、社員ひとりひとりの持つ価値観に関する感想がとても多いです。管理職研修としてグループワークを行い、いわば同じような層の社員でも価値観が違うことを知ることができるので「チーム内でそれぞれの優先順位や考えを共有したい」「自分にとって何が許せないのか、明確にしたい」という声が上がっており、具体的な今後のアクションに繋げやすいようです。

 

今年開催された第2回アンガーマネジメント経営賞の表彰式にて、山田様の「形だけのホワイト企業にはなりたくないという思いで、実効性のあるベーシックなエンジンとしてアンガーマネジメント研修に取り組んだ。」というお言葉が印象的でした。アンガーマネジメント研修が従業員の方々の原動力に繋がったといえる具体的なエピソードがあればお教えください。

アンガーマネジメントというワードが社内に浸透しました。少し怒りの感情を表に出しやすいと思われる社員が、自発的にアンガーマネジメントのスキルで何とか乗り切ろうとしてくれたりもします。

研修を通じてアンガーマネジメントを学習することによって、自省、内省をできるようになっているのが効果として表れていると感じています。

 

アンガーマネジメントの理念を会社として社員に提供していくことが、エンゲージメント向上にも繋がる

アンガーマネジメント研修を2019年に導入していただき、今年で6年目を迎えます。今後、アンガーマネジメントを活用しながら実現したいと考えていることはありますか?

最初は社員同士の衝突やハラスメントを防止するために導入しましたが、それはかなり改善されてきていると感じます。

次のステップとしては、会社以外の個人での生活も含めて、自分にとって受け止め難い何かを受け入れられることを目指してアンガーマネジメントを活用していくと人生が豊かになるのではないか、そのアンガーマネジメントの理念を会社として社員に提供していくことがエンゲージメント向上にも繋がるのではと強く感じています。
ですので、今後は管理職だけでなく、そこに悩んでいる全ての社員へ対象を切り替えていけるといいのかなと。

今年度からスタートするフォローアップ研修も、社員それぞれが持つ怒りの正体である「べき」に焦点を合わせています。フォローアップ研修を受けた社員たちには、アンガーマネジメントの活用方法をブラッシュアップしてもらいたいです。

セイコーエプソン株式会社について

セイコーエプソン株式会社(以下、セイコーエプソン)は、長期の時間軸で「人が自律的にキャリアを形成し、成長し続ける会社」を目指して人材育成強化を掲げています。

そして公平で働きやすい職場環境の実現に向けてパワーハラスメントの撲滅のため、2015年度より「アンガーマネジメント研修」を導入しました。現在その開催回数は800回以上、累計受講者数は1.3万人を超え、実施数の多さからも反響の高さが伺えます。

その継続年数と圧倒的な受講人数もさることながら、全経営層がアンガーマネジメント診断受検を必須とし、アンガーマネジメント研修を階層別・職場別のほかグループ会社にも実施しており、社全体で健全な職場環境の実現に向けた取り組みを推進しています。
当協会ではその取り組みを讃え、昨年2023年に開催された第1回「アンガーマネジメント経営賞」では、アンガーマネジメント経営賞 大賞をお贈りしました。

アンガーマネジメントを社内研修に導入した人事部 土田英文様に、その取り組みや成果についてお話を伺いました。

 

ハラスメントで処分を受けた社員の今後の対策を模索していた時に、アンガーマネジメントと出会った

貴社は「人材」をかけがえのない経営資源として位置付け、人材開発・教育を実施していらっしゃると伺いました。そこに向けた人材戦略についてお聞かせください。

当社では自由闊達で風通しの良いコミュニケーション環境により関係の質を向上させ、社員と会社が成長し続ける組織風土を目指しています。
そのために掲げているテーマとして「健康経営」と「人権の尊重」があります。

まず「健康経営」については、当社では社員と会社が一体となり「いきいきと楽しく働くことができる職場環境づくり」「こころとからだの健康づくり」に取り組んでいます。2022年から今年2024年までの3年連続で、経済産業省と東京証券取引所から「健康経営銘柄」に選定されました。

そして「人権の尊重」は、当社は企業活動における人権の尊重は企業が果たすべき重要な責務であると考えています。ハラスメント等の人権侵害事案の未然予防・再発防止に努めています。

「健康経営」も「人権の尊重」も、アンガーマネジメントの理念は欠かせないものと考えています。

さらに当社代表の小川は「社会貢献と従業員の幸せ」を大切にすると明確なメッセージを発信しています。

このように代表をはじめ社として従業員の幸せを目指す風土となっていることが、ここまでアンガーマネジメント研修の開催を継続できたことに繋がっていると思います。

 

アンガーマネジメント研修導入以前の課題と、導入が進んだ背景を教えてください。
また、アンガーマネジメント以外にもコミュニケーションやチームビルディングに関する様々な研修がある中、導入に至った理由をお教えください。

それまでの人事部門の研修導入の形とは異なり、導入のきっかけは個人的なスタートでした。

社内でパワハラに関する問題が発生した時に、会社としては事実確認をしてパワハラ認定して処分するというサイクルはもちろん構築していましたが、そこから行為者本人が自身をどう改善してくのか、その術がありませんでした。

そこに課題を感じていた時に、「アンガーマネジメント」に出会いました。

書籍を読んだ瞬間、パワハラ対策・改善にはこれだと思って、日本アンガーマネジメント協会のイベントに参加しアンガーマネジメントファシリテーター養成講座に飛び込んで資格を取得しました。

※参考情報)
セイコーエプソン株式会社コーポレートサイト「人権の尊重 | サステナビリティ 」ページより「パワーハラスメント防止への取り組み」にて、パワハラ防止研修などの詳細をご覧いただけます。

https://corporate.epson/ja/sustainability/our-people/human-rights.html

 

「怒りは高いところから低いところへ流れる」から、導入時から管理職へのアンガーマネジメント研修をはじめた

今まで行った研修メニューについて教えてください。

はじめはアンガーマネジメントに興味のある人を終業後に募って一緒に学ぶ場を作るところからスタートしながら、並行して役員研修として管理職全員に受講してもらえる計画を立てました。

当初から経営層や管理職へのアンガーマネジメント研修は必須だと思っていました。
なぜなら「怒りは高いところから低いところへ流れる」から。立場の強いものから弱いものへ、怒りは流れていきます。
だから2015年12月に私がAMFT(アンガーマネジメントファシリテーター)の認定を受けてアンガーマネジメント入門講座を開講できるようになってから、すぐに翌月の2016年1月にはこの研修を開講しました。

AMFTの資格を取得してからも、アンガーマネジメント入門講座以外にも自社で開催できる講座やセッションの幅を広げるために、アンガーマネジメントコンサルタントをはじめとした各種資格を取得しました。

怒りの感情との向き合い方や長期的な体質改善のスキルを身に付ける基礎編から、パワーハラスメントにならないコミュニケーションスキルを学ぶ叱り方教室など、経営層への展開を筆頭に、階層別・職場別・自己啓発(任意申し込み型)など、2024年3月度までで805回実施開催し、当社および国内関係会社延べ1.3万人余りが受講しています。
従来の知識としてのパワハラ防止研修に加え、具体的なスキルの習得でパワーハラスメントの撲滅を目指しています。

※各種企業研修の詳細はこちら>
アンガーマネジメントファシリテーター養成講座の詳細はこちら>

 

トップ層からアンガーマネジメント研修を導入していったのですね。
全経営層の方々に受検必須とされているアンガーマネジメント診断を、どのように活用していますか?

2016年から毎年アンガーマネジメント診断を経営層には実施しており、「健康診断」のごとく診断結果のフィードバックを続けております。

そして特に変化があった方や、気になった方などに関しては、個別にフォローをすることで、毎年の循環が良好に継続できることを目指しています。

 

一人ひとりがアンガーマネジメントを日常化し、自力で継続的に変化に対処できるようになるためには、5年や10年は簡単にかかる

アンガーマネジメント研修に対する社員様や、人事ご担当者様の感想をお聞かせください。

研修アンケートの満足度は、5段階で平均4.5ポイントレベルと高得点です。
ただ、受講者にはアンガーマネジメントのような心理トレーニングは新鮮でインパクトがあり、これはある意味当たり前だと思っています。
むしろ本当にその後取り組めているかが大切だと思っています。

 

研修受講後の社員様の変化や反響があれば、お教えください。

当初、各回定員20人で募集したところ、募集開始1時間以内に満席になるような状態が1年以上続いて、反響は大きかったです。
そしてある程度反響が落ち着いた後、コロナ禍で対面での研修開催がままならなくなりオンラインでの開催を実現したところ、再び20名の募集が満席になり続けるという状態が続きました。申し込めなかった社員からクレームも来て、反響の高さに驚きました。

変化といえば「アンガーマネジメント」とか「6秒ルール」のような言葉は、会社の共通言語になったのではないかと思います。

またここ数年は、社内の職場単位・部門単位で受講したいというニーズが増え、解決志向やチームビルディングなど、実践的な応用分野に取り組む傾向もみえます。職場としての必須研修として位置づけて受講を促しているケースもあります。

また、セイコーエプソンのみならず、連結のグループ会社でも階層別研修として位置づけたり、トップも自ら旗を振って受講したりと社外にも拡大しています。

 

アンガーマネジメント研修を2016年1月に導入していただき、今年で9年目を迎えます。長期的に続けてくださった理由や、ご評価いただいている点があればお教えください。

一人ひとりがアンガーマネジメントを日常化し、自力で継続的に変化に対処できるようになるためには、私は最初から5年や10年簡単にかかると思っていました。

ましてや変えてやろうなどという風に息巻いて取り掛かったら、かえって遠回りになると思っています。

任意申し込み型であるオープンコースは、もともと関心のある社員が中心なので、アンガーマネジメントを知るきっかけとしては良かったと思います。ただ、どうしても「参考書を買って安心した」という風に、わかった気になって結局は習慣化しないということはいくらでも起こりうると感じています。

当初から私はこの研修において、「何度でも受講してね」と伝え続けています。

実際に、3回、4回、5回と顔を見せて、やっと表情が変わったというかたもいらっしゃいます。
AMFT養成講座に自ら参加して講師になった人もいます。

自然発生的に、そうやってアンガーマネジメントによって自らを変えることができたという社員が増えてきた時に、やっと効果が出てきたといえるのかなと思います。

もともとはパワーハラスメント撲滅が目的でしたから、その発生状況などが研修成果を計るひとつの指標になるのでしょうけれど、それだけがゴールではないと感じています。

 

貴社内でアンガーマネジメントを活用しながら実現したいと考えていることはありますか?

徐々に職場単位での受講が増えてきています。
これは組織としてメンバーみんなが「こういう職場にしたい」という意識が芽生えてきた証かなと思っています。
これこそが健全なソリューションフォーカスアプローチかなと感じます。

そしてそんな風にベクトルが未来に向かっている中で、今後はもっと職場内でのグループセッションが増えるといいなと思っています。
グループセッションによってその時その時の自身の気づきを得て何でも解決ができ、それをチームに持ち帰って未来に生かしていく、そういう流れを生む仕掛けを作りたいですね。

あと、アンガーマネジメントの熱意や継続する意思を持つ私の後任を、そろそろ見つけなければと思っています。