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「察する文化」が怒りを生む?

2016年07月19日

◆気が利かない

私は、仕事で、経営者や管理職と接することが多いのですが、よく耳にするのが、部下、とくに若い人が「気が利かない」ということです。
「いちいち言わないとやらない」「言われたことだけしかやらない」「本当に気が利かない」と言われます。

そして、この「気が利かない」という気持ちが、私たち日本人の怒りの原因のひとつになっていると感じます。
身近な人や接客サービス業の人など誰かが「気が利かない」ことに対して、私たちは、腹を立てることが多々あります。

つまり、私たちは「気が利かない」の逆の「気が利く」ことを、相手に求めているのです。
「気が利く」とは、細かいところにまで注意が及ぶこと。「目配り・気配り・心配り」という言葉もあるように、周囲の人の様子を観察し、相手の気持ちを察して、先回りして動く、かゆいところに手が届く対応を求めています。

 

◆ハイコンテクスト文化

この「察する」ことをよしとするのは、アメリカの文化人類学者、エドワード・ホールが唱えた「ハイコンテクスト文化」の特徴でもあります。

「コンテクスト」とは、コミュニケーションの基盤となる言語、共通の知識・体験・価値観・考え方・習慣などです。

それらを共有している割合が高い「ハイコンテクスト文化」の国、日本では、いちいち伝えなくてもわかって当然という気持ちが大きく、伝えないとわからない「空気を読めない」人や「気が利かない」人への評価が低くなります。

「私の気持ちを察してくれない」「無視された」「これだけ相手の気持ちを察してあげているのに、期待に応えない」と、怒りにつながります。

欧米など、共有している割合が低い「ローコンテクスト文化」では、相手と自分は違うことが前提のため、わかりやすく伝える、情報を正確に伝えることが重視されます。
何も聞かずに察して動くのではなく、前もって相手のニーズを細かく聞いて動くことが求められ、聞く側だけでなく、伝える側の能力も問われます。

 

◆わざわざ言う

「察する文化」では、聞かずに動くことの価値が高いため、「わざわざ言うこと」は、ときに「失礼なこと」になってしまいます。

たとえば、「何が食べたい」と聞かれたら、「お任せします」と言ったほうがよいことがあります。
じつは、既にお店や料理は予約されていて、形だけ聞いていることがあるからです。そんなときに、「これを食べたい」と自分の意志を伝えると、「察していない」迷惑な人になってしまいます。

しかし、こういった「以心伝心」の文化も、限界に近づいているように感じます。
日本の国内でも、外国の人と一緒に働く機会も増えていますし、世代によって、また、その人の環境や経験によって、共通の「コンテクスト」の割合が減ってきているからです。

「アンガーマネジメント」では、自分が「こうあるべき」だと思っている常識、理想は、他の人と共通ではない、一人ひとり違うことを説明しています。

相手が「気が利かない」と腹を立てる前に、違うことを前提として、伝えることを意識したほうがよいでしょう。

 

さて、昨年7月にスタートした、このコラムシリーズ。当協会のアンガーマネジメントファシリテーター5人が持ち回りで、毎週火曜日・木曜日に記事をお届けし、今回で100回目になりました。
このシリーズは、今回でいったん終わりになります。これまでお読みいただきまして誠にありがとうございました。

 

(文・編集:川嵜昌子