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合併を経て、多様な人材が活躍する商社

多様性に富む社員が在籍し、商社としての複雑な仕事を進める上で、円滑かつ効果的なコミュニケーション、職場環境の改善、ハラスメントの防止は重要な取り組みです。

2025年度「アンガーマネジメント経営賞」を受賞した日鉄物産は、どのようにアンガーマネジメント研修を、管理職やグループ会社役員にまで拡大していったのでしょうか。

「ハラスメント防止」や組織の「心理的安全性」の観点から、その取り組みについて岩田敏昭(いわたとしあき)常務執行役員(写真左)と岩村幸代(いわむらさちよ)人事企画部人財開発課長に話を伺いました。

——この度は、アンガーマネジメント経営賞の受賞、おめでとうございます。多岐にわたる事業を展開されていますが、まず御社について教えていただけますか?

岩田:日鉄物産は、日本製鉄が80%を出資する商社です。当社は、「鉄鋼」「産機・インフラ」「食糧」の3つの事業本部があり、加えて関係会社で「繊維」事業を展開しています。グループ全体では4つの事業があり、2024年度の実績は連結売上高約2兆1800億円、連結経常利益536億円という規模です。

当社の特徴は、多くのM&Aや合併が続いてきたことです。さまざまな企業で経歴を積んだ社員が在籍しているため、多様性が当社の社風や人事、組織の大きな特徴のひとつとなっています。

商社といえば、単に物を仕入れて売るトレーディングを想像されるかもしれませんが、それだけではお客様や仕入先様のご期待には応えられないのが、現在の商社です。トレーディングだけでなく、例えば加工機能の付与、在庫を管理し納期調整を行う、繊維や食糧事業では提案から受注、製造まで担うといった付加価値創出が当社の強みです。

こうした仕事は個人の力だけでなく、組織的な検討・協力が必要です。一方で、多様な社員が一つの複雑な仕事を進めるには、円滑なコミュニケーションや職場環境の改善、ハラスメントの防止が重要だと位置づけ長年取り組んできました。

「ハラスメント防止」と組織の「心理的安全性」 アンガーマネジメントの導入

——御社はバックグラウンドの異なる多様な社員がいるとのことですが、どのような課題意識でアンガーマネジメント研修を導入されたのでしょうか。

岩村:当社は、「魅力のある会社」「エンゲージメントの高い会社」を目指していて、「ハラスメント防止」や「心理的安全性」の取り組みが非常に大きな意味を持つと考えています。2023年には中村真一社長が「ハラスメント撲滅宣言」をし、同年、ハラスメント防止キャンペーンの一環として、ポスターを国内外の関係会社にも配布しました。

その年の課長層向け研修を検討していたところ、「部下の育成」「信頼関係の強化」のため、冷静な判断力を育みマネジメント力向上を目指せる、加えて組織の心理的安全性や風土改善にも役立つと考え、アンガーマネジメント研修を導入しました。

最初は課長が選択できる研修プログラムの一つとしてアンガーマネジメント研修を実施し、受講者からは大変好評をいただきました。

——実際に受講された方からは、どんな声や感想がありましたか?

岩村:「アンガーマネジメントの理論や手法が実務に役立つ」「怒りのコントロールやアンガーログも効果的」などの声がありました。

特に「自分の“べき”と相手の“べき”が違うことを冷静に考え直すことが役立つ」という感想が多く、私も共感しました。

——最初は選択制だったとのことですが、翌2024年には部長層や社長を含む役員、グループ会社役員に受講対象を拡大されたそうですね。

岩村: 課長層の研修時に、「ぜひ上司も受けてほしい」「全社員にも知ってもらった方がいい」と多くの意見が寄せられました。

人事部門としてこの考え方を全体に広めることが良い職場環境づくりにつながると判断し、部長層、役員層、グループ会社にも展開しました。

マネジメント層の実践に期待 若手社員にも伝えたいハラスメント

——課長層を入り口として部長、役員、グループ会社にもアンガーマネジメント研修を拡大しましたが、組織風土や社員の意識にはどのような変化を感じますか?

岩村:以前は命令型の指導が多かった記憶がありますが、最近は部下の気持ちに配慮した指導を心掛ける管理職が増えたように思います。

岩田:当社は、国内外の関係会社出向者を含め約1600人、連結グループ全体で約6500人の社員がいます。課長層から部長・役員・子会社役員にアンガーマネジメント研修を広げていますが、組織の変化をすぐには把握しきれていません。

ただし役員・部長・課長の立場にある人が体系的に学び実践することは非常に大きな影響があると考えます。アンケートでも、「研修内容を今後実践します」というコメントが多く、今後の効果に期待しています。

また、社員アンケートやストレスチェック等で一連の活動や研修の効果をモニタリングし、組織改善につなげたいと考えています。

さらに、管理職だけでなく若手社員や営業を補助する職種の方にもぜひ受講してほしいという声が多くありました。ハラスメントは“上から下”だけでなく、“下から上”へのケースもあり得ると気づかされました。今後も研修対象を広げ、組織強化の原動力にしたいと考えています。

ハラスメント防止と人材育成、全社員の学びと「職場内対話」

——「社員一人ひとりが『人財』として信頼される存在を目指す」とのことですが、今後の取り組みについて教えてください。

岩村:毎年、グループ会社も含め全社員が「ハラスメント防止」のeラーニングを受講しています。昨年度は、「業務上やむを得ず注意することはハラスメントにはあたりません」といった内容や、下からのハラスメント行為防止についても取り上げました。

また「職場内対話」と称して、年1回、全社員5~6名のグループに分け、ハラスメントをテーマに話し合う場を設けています。「“くん付け”“ちゃん付け”はよいか」というようなことから、対話して相互理解を深めることが大切だと考え、取り組んでいます。

2023年度の「職場内対話」では世代間でハラスメント基準にギャップがあると分かり、2024年度は「世代の特徴を理解したコミュニケーション」をテーマに話し合いました。

岩田:2024年度はグループ会社にも広げて実施しました。初めての試みですが、今後も改善を重ねつつ続けたいと考えています。

——アンガーマネジメントの視点から、組織のあり方についてお考えがあれば教えてください。

岩田:職場環境の方針は経営指針や社員の行動理念としてまとめていますが、やはり個人ごとに考え方は異なると思います。

アンガーマネジメントやハラスメント防止の根底には、共に働く社員や関係会社の皆さんが大切なパートナーであるという認識があります。「上司・部下」「偉い・偉くない」は関係なく、お互いをリスペクトし接することが重要だと思います。

まずは自分を守るための意識として始まるかもしれませんが、本質は「周囲をリスペクトし大切にすること」。この考え方を持ってほしいと、研修や懇親会でも伝えています。こうした環境が整えば、より良い企業グループになれると考えています。

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