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◆店舗の一角のATMで

Aさんの体験です。
スーパーマーケットの一角に設置された銀行のATMで、となりに携帯電話で話しながらATMを操作している人がいました。見ると70歳台後半か80歳台で、携帯電話で話す姿と不慣れな操作の様子に違和感がありました。ご存知の方もいると思いますが、高齢者が携帯電話で指示を受けながらATMを使用する姿は、振り込め詐欺の可能性があります。

警察庁の公表によれば、振り込め詐欺のような特殊詐欺の2015(平成27)年の発生は13,828件、被害額は476億8,000万円にのぼります。また、約8割は65歳以上で、今回のように対策が行き届かない店舗の一角やコンビニのATMは、振り込め詐欺に狙われやすいのだそうです。
私たちは、このような場面にいつ遭遇してもおかしくないのです。

とはいえ、いきなり見ず知らずの人が声をかけたりしたら、不審者扱いされかねません。そこでAさんは、店員さんに、その老婦人に声をかけてほしいと伝えてみました。
しかし、「困っている様子もなく電話をかけているだけでは声をかける理由にはならない」と言われてしまいました。店員さんは、離れたところから様子を見守っているものの、老婦人に声をかけてくれません。
それに、並びのATMを利用していた人は、その老婦人を気にとめることもなく去っていき、また次の人が並んでいます。

 

◆正義感が強すぎると怒りを招く?

なんで店員さんは声をかけてくれないの?
なんで皆知らんふりなの?
皆、冷たい!

そんなことが頭を巡り、Aさんに怒りが沸きました。

Aさんは「高齢者を詐欺被害から守らなくては」という正義感が先行して、周囲の人々の反応に不満に感じていました。
正義感を持つのは悪いことではありませんが、正義感が強すぎると、自分は正しいという思いから、ほかの人の価値観を受け入れられなくなり、正義を振りかざして、他人に怒りが向かってしまう危険性があるのです。

銀行員ならすぐに声をかけるのでしょうが、スーパーマーケットでは、ATMに目を配るのが最優先というわけにはいきません。そればかりか、不用意にATMの画面情報が見える位置まで近づくのはトラブルになる危険性もあります。

並びのATMを利用して次々に入れ替わっていく人々も、見て見ぬふりというのは思い込みかもしれません。高齢でもATMを利用し携帯電話を使う人はいます。その姿を見て振り込め詐欺を疑うとは限りません。となりに老婦人がいたことに気付いていない可能性もあります。
そもそも、その老婦人が振り込みをしているかどうかもわからないのです。

一度は、周囲に怒りが向きかけたAさんですが、冷静に思考を整理して店員さんや周囲の人々は怒る対象ではないと気づきました。
「高齢者を詐欺被害から守りたい」という思いに立ち戻り、改めて店員さんと相談して老婦人に声をかけてみると、本当に詐欺の電話を受けていました。
もし、これが勘違いだったとしても、冷静に事実確認できれば、Aさんの心配は解消できます。

思い込みによる怒りに振り回されずに、冷静な判断と対応を身につけていきたいと思う出来事でした。

 

(文:田辺有理子/編集:川嵜昌子