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「急速な変化と予測不可能な出来事が日常となっているVUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)の時代において、プロジェクトマネジメントはかつてないほど複雑さを増しています。プロジェクトを成功に導くためには、リーダーシップだけでなく、感情のコントロールが重要です。今回は『ご機嫌なチームを作る秘訣とは? 』をテーマに、田草川参事にアンガーマネジメントのスキルがどのようにプロジェクトマネジメントに貢献し、メンバー間の摩擦や対立を乗り越える助けとなるのか、またリーダーが自身の「ご機嫌」であることによってプロジェクトの成功につながるのか、様々な角度からお話を伺いました。

 

 

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会参事 田草川 太郎氏紹介

田草川参事プロフィール

プロフィール

 

 

普段のお仕事やご活動を教えてください

普段は企業で業務改善やシステム開発プロジェクトのディレクションを行っています。また、日本アンガーマネジメント協会とプロジェクトマネジメント協会(PMI)にも所属し、それぞれの専門知識を日々の生活に活かしています。

 

プロジェクトを端的に言うと?

プロジェクトをひと言で言いますと「期限内に目標を達成するための特別な仕事」です。

対になる言葉は定常業務で、日常的に繰り返され終わりが決まっていない定常業務に対して、プロジェクトは、一度きりの決まった期限の中で特定の成果を目指します。

 

プロジェクトマネジメントにおいて、アンガーマネジメントのスキルはどのように役立つとお考えでしょうか?

この数年でプロジェクトを取り巻く環境はおおきく変化し、プロジェクトの成功に対する考え方も、「成果物をきっちり届けること」から、「価値を届けること」に変わってきています。

これは不確実性がますます高まっている昨今では、単に計画を守ることがゴールではなく、どのようにしてステークホルダーに価値を生み出すかに重きをおいていると言えます。

また変化のスピードが激しい昨今では、「スピードは正義」と言われるように、まずは動くものをリリースしてそれをカスタマイズしていくという、アジャイル的な考え方*も主流になってきています。

このような状況下で、プロジェクトを通して価値を生み出すためには、以前よりも個人との対話や、クライアントとの協調、変化への対応が必要になります。

その上でアンガーマネジメントは、ステークホルダーとの会話の質を高め、円滑な協力関係を築くために重要なスキルだと思います。

 

*アジャイル的な考え方とは、変化に柔軟に対応して、高いパフォーマンスを達成するための思考プロセスです。アジャイル(agile)は「素早い」「機敏な」という意味の英語で、ソフトウェア開発の手法であるアジャイル開発から派生した思考方法です。

アジャイル的な考え方

プロジェクトの進行中にメンバー間の対立や摩擦が生じた場合、どのようにアンガーマネジメントを取り入れて対応していますか?

プロジェクトの進行中は多様な意見や立場が存在し、その中で折り合いをつける場面が多くあります。また意図しないトラブルや要求の変更によりフラストレーションも溜まりがちになります。

このようなイレギュラーな出来事が起きた時に、アンガーマネジメントで有効なテクニックやスキルがたくさんあります。

その1つとして「相手の持つ『べき』は何なのか?」を考えるようにしています。ステークホルダーはそれぞれ置かれている立場が違うので、当然守るものも違います。

「べき」って人それぞれで違うのでまずはそこを探ったうえで、プロジェクトとしての落としどころを見つけていくのが大切かなと思います。

プロジェクトメンバー

プロジェクトマネジメントでのストレスやフラストレーションを効果的に管理する方法について、具体的なアドバイスをお願いできますでしょうか。

誤解を恐れずに言いますと、必要のないことを「深く考えない」です。

この「必要のないこと」の解釈がポイントで、わたしも以前はプロジェクトの進捗やクライアントとの関係がうまくいっていない時に、夜家に帰ってきてからも考え過ぎて眠れないことがありました。

お酒や睡眠導入剤に頼ったりしていましたが、長期的に見てまったく健康的ではありませんでした。

アンガーマネジメントでは「行動のコントロール」というメソッドがあります。

その状況を自分で「変えられるか、変えられないか」、またそれは自分にとって「重要か、重要でないか」の四象限で考えます。「自分で変えられない、かつ重要でない」ことは、前述の「必要のないこと」であってその最適解は「気にしない」になります。

「頑張る」という言葉がありますが頑なに気を張る必要はなくって、つらい時こそ「顔晴る」といいますか、“ご機嫌”でいたいなと思います。

 

プロジェクトメンバーとの衝突

 

リーダーは“ご機嫌”な方が、実際に仕事はうまくいきますか?(ご自身をご機嫌に保つ秘訣を教えてください)

そうですね、リーダーが“ご機嫌”でいることは、仕事のパフォーマンスや職場環境を向上させる要素の1つになると思います。リーダーがオープンでフレンドリーな方が、周囲の人も気軽に話しかけやすくなりますよね。意見やアイデアの共有もスムーズになると思いますし。

そして“ご機嫌”でいるためには、いまやっていることは「チームが目指すゴールに向かっているはず」という自信を持つことかなと思っています。時には間違っている場合でも、リーダーが自信を持っていることが、周囲のメンバーも安心できるのではないでしょうか。

 

 

キャリアアップを目指す方々に、アンガーマネジメントの観点からどのようなアドバイスを送りますか?

キャリアが進むにつれ、仕事のプレッシャーや期待も大きくなりがちだと思います。

その中で、生まれる怒りに対していったん冷静になり対処する能力は、成長するにつれ欠かせないスキルになると思います。

アンガーマネジメントの観点からは、怒りを感じた時には感情的に反応するのではなくひと呼吸おき、合理的な行動を選択するよう心がけて頂きたいと思います。

キャリアアップとアンガーマネジメント

 

田草川参事は穏やかなイメージがありますが、家庭でもアンガーマネジメントが役立つことはありますか?

小学校4年生の息子と、1年生になる娘がいるのですが、2人には「お父さんはズルいことが嫌い」、「3回同じ注意をしたら怒るよ」といった、わたしが怒るポイントをあらかじめ伝えています。

学校で忘れ物をして帰ってきた時に、怒られるから黙っていた。と言う娘には怒りましたね。

逆に、夜ごはんを食べずにふざけている息子に怒ったら、「まだ注意2回目だよ」と言いかえされてしまうこともあります。その時は自分の機嫌で怒ってしまったな…まだまだだなと反省です。

このようにあらかじめ家族に、自分の「怒りの境界線」を見せておくことで、理不尽に怒ってないことが伝わっているのは良いことのように思います。

わたしにとってアンガーマネジメントは、仕事でもプライベートでも役立っているなって思います。

家庭でのアンガーマネジメント

 

最後に参事としてのご自身のビジョンや目標についてお聞かせください

協会の会員の皆さまは、企業の経営者や社員、公務員、専門職、そして主婦と多様な立場の方がおられます。これは協会の理念である「怒りの連鎖を断ち切ろう」を広めるうえで、おおきな強みの1つになっています。

アンガーマネジメントを広げる白地はまだまだたくさんあると考えており、この多様性を踏まえ、時代の変化にあわせたプロジェクトを進めながら、理念のさらなる普及を目指していきたいと考えています。

 

協会内外の様々なプロジェクトでもご活躍中の田草川参事に、複雑化する時代のプロジェクトリーダーが、アンガーマネジメントを実践する意義や具体的な手法を中心に教えていただきました。この記事をご覧の方々のプロジェクト運営について、きっかけやヒントになれば幸いです。

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